エアコンを使うたびに気になるのが「電気代」。特に「風量の設定って電気代に影響するの？」「弱にすれば節約できる？」といった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
結論、エアコンの風量設定は電気代に影響しますが、風量を「弱」にすることが節約につながるわけではありません。むしろ、風量は「自動」に設定するのが最も効率的で、電気代の節約になります。
この記事では、風量設定と電気代の関係から、具体的な節約方法まで、メーカーの実験データをもとに詳しく解説します。
目次
エアコンの風量設定で電気代は変わらない？
エアコンの「風量を弱にすれば電気代が安くなる」と考えている方は多いですが、実は逆効果になる可能性があります。ここでは、風量と電気代の関係について解説します。
風量設定は電気代に影響する
エアコンの風量設定は、電気代に影響します。ただし、風量そのものが直接的に大きな電力を消費するわけではありません。室内機のファンを回す電力は、エアコン全体の消費電力と比べるとわずかです。
重要なのは、風量設定によってエアコンの運転効率がどう変わるかという点です。
風量を弱にすると一見省エネに見えますが、実際には設定温度に到達するまでの時間が長くなり、その間ずっとエアコンが稼働し続けるため、トータルの電気代は高くなる傾向があります。
電気代を左右するのは「設定温度到達までの時間」
エアコンが最も多くの電力を消費するのは、室温を設定温度まで調整する過程です。設定温度に到達した後は、その温度を維持するために必要な電力は大幅に減少します。
つまり、いかに短時間で設定温度に到達させるかが、電気代節約の最重要ポイントとなります。外気温と設定温度の差が大きいほど、設定温度に達するまでの時間が長くなり、その分多くの電力を消費することになります。
- 起動直後〜設定温度到達まで：圧縮機がフル稼働し、消費電力が最大（全体の約8割）
- 設定温度到達後：室温維持のための最小限の運転に切り替わり、消費電力は大幅に減少
風量「弱」は逆に電気代が高くなる
風量を「弱」にすると、室内機の熱交換器を通過する空気の量が少なくなり、冷却・加熱の効率が低下します。その結果、設定温度に到達するまでの時間が長くなり、圧縮機の稼働時間が延びてしまいます。
パナソニックの調査によると、風量「微風」は「自動」に比べて、設定温度に到達するまでの消費電力が約20％高く、到達時間も約6.4分長いことが報告されています。
出典：パナソニック株式会社「2022年 夏のエアコン節電に関する調査」
- 熱交換器を通過する空気の量が少なく、冷却・加熱効率が低下する
- 設定温度に到達するまでの時間が長くなり、圧縮機の稼働時間が延びる
→結果として、トータルの消費電力が約20％増加する
つまり風量自体は少ないのに、長時間運転することでトータルの電気代はむしろ高くついてしまうという逆転現象が起きるのです。
エアコンの風量「自動」が最も電気代の節約になる理由
エアコンの風量設定で最も電気代を節約できるのは「自動」モードです。ここでは、なぜ自動運転が最も効率的なのか、その理由を詳しく解説します。
自動運転は設定温度まで最短で到達できる
自動運転モードでは、設定温度に到達するまでは強風で一気に運転します。これにより、エアコンが最も電力を消費する「設定温度到達までの時間」を最小限に抑えられます。
風量を弱に固定していると、設定温度に到達するまでに時間がかかり、その間ずっと圧縮機が稼働し続けるため、電気代が高くなります。自動運転なら、強風で短時間のうちに設定温度まで到達させることで、圧縮機の稼働時間を大幅に短縮できます。
室温に応じて風量を自動調整するため無駄がない
自動運転の最大の特徴は、設定温度に到達した後、自動で微風や弱風に切り替わる点です。室温を維持するためには強風は必要なく、微風で十分なため、余計な電力を消費しません。
また、室温の変化に応じて風量を自動調整してくれるため、常に最適な運転状態を維持できます。手動で風量を調整する手間もかからず、快適性と省エネを両立できます。
- 起動直後：強風で一気に冷やす・暖める
- 設定温度到達後：微風・弱風に自動切り替え
- 室温変化時：温度センサーが感知して風量を自動調整
メーカー実験で約3割の節電効果を実証
ダイキン工業の実験では、風量「弱」と「自動」を比較した結果、自動運転の方が消費電力量を約3割削減できることが確認されています。
出典：エアコンの効果的な節電術で削減できる電気代を4つのケースで調査｜ダイキン工業株式会社
具体的な数値で見てみましょう。月額の電気代が3,000円の場合、風量「弱」で運転すると約3,600円になりますが、風量「自動」なら約2,800円程度に抑えられる計算になります。年間では約9,600円の差が生まれます。
| 風量設定 | 月額電気代 | 年間電気代 | 自動との差額 |
|---|---|---|---|
| 自動 | 約2,800円 | 約33,600円 | – |
| 弱・微風 | 約3,600円 | 約43,200円 | +9,600円/年 |
| 強（固定） | 約3,300円 | 約39,600円 | +6,000円/年 |
このデータからも、風量を「自動」に設定するだけで大きな節約効果が得られることがわかります。
エアコンの電気代を計算する方法
エアコンの電気代を把握することで、節約の効果を実感しやすくなります。ここでは、ご家庭のエアコンでかかる電気代の計算方法と、実際の目安を解説します。
電気代の基本的な計算式
エアコンの電気代は、以下の計算式で求められます。
電気代（円）= 消費電力（kW）× 電気料金単価（円/kWh）× 使用時間（時間）
※全国家庭電気製品公正取引協議会が定める目安単価は、31円/kWh（税込）です。
計算例
消費電力が500Wのエアコンを1時間使用した場合の電気代は、以下のように計算できます。
500W ÷ 1,000 × 31円 = 約15.5円
1日8時間使用した場合は、15.5円 × 8時間 = 約124円となり、1ヶ月（30日）では約3,720円となります。
消費電力の確認方法
エアコンの消費電力は、以下の方法で確認できます。
- 取扱説明書のスペック表
- エアコン本体の銘板（室内機の下部や側面）
- メーカーの公式サイトの製品情報ページ
エアコンのスペック表には、冷房時と暖房時の消費電力が記載されており、「〇〇W（△△W〜□□W）」のように幅を持って表示されています。この幅は、最小能力で運転している時の消費電力から、最大能力で運転している時の消費電力までの範囲を示しています。
冷房と暖房の電気代の違い
同じエアコンでも、冷房と暖房では電気代が異なります。一般的に、暖房の方が電気代は高くなる傾向があります。
これは、夏と冬では外気温と設定温度の差が異なるためです。例えば、夏の外気温が35℃で設定温度が28℃の場合、温度差は7℃ですが、冬の外気温が7℃で設定温度が20℃の場合、温度差は13℃にもなります。
温度差が大きいほど、設定温度に到達するまでに多くのエネルギーが必要となり、電気代も高くなります。
| 季節 | 外気温 | 設定温度 | 温度差 |
|---|---|---|---|
| 夏（冷房） | 35℃ | 28℃ | 7℃ |
| 冬（暖房） | 7℃ | 20℃ | 13℃ |
そのため、冬場は特に風量を「自動」に設定して、効率的に運転することが重要です。
エアコンの風量設定以外でできる電気代節約術
風量を自動に設定することに加えて、日々の使い方を工夫することで、さらに電気代を節約できます。ここでは、今日からすぐに実践できる節約術を紹介します。
設定温度を適切に調整する
エアコンの電気代を節約する上で、最も効果的なのが設定温度の調整です。冷房時は設定温度を1℃上げると約13％、暖房時は1℃下げると約10％の節電効果があるとされています。
- 冷房時：28℃を目安に（環境省推奨）
- 暖房時：20℃を目安に（環境省推奨）
- 冷房時の風向：水平または上向き
- 暖房時の風向：下向き
風量を自動に設定した上で、適切な室温を保つことで、快適さと節電を両立できます。
サーキュレーターや扇風機を併用する
エアコンと一緒にサーキュレーターや扇風機を使うことで、部屋の空気を循環させ、効率的に冷暖房できます。これにより、エアコンの設定温度を控えめにしても快適に過ごせるため、節電につながります。
冷房時は、エアコンの風向を水平に設定し、サーキュレーターを天井に向けて回します。これにより、上部に溜まった暖かい空気と下部の冷たい空気が混ざり、部屋全体が均一な温度になります。
暖房時は、エアコンの風向を下向きに設定し、サーキュレーターを天井に向けて回します。天井付近に溜まった暖かい空気を循環させることで、足元まで暖気が届きます。
フィルターを定期的に掃除する
エアコンのフィルターにホコリが溜まると、冷暖房効率が低下し、余計な電力を消費します。定期的な掃除を行うことで、エアコンの性能を維持し、電気代を抑えられます。
フィルター掃除の適切な頻度は、2週間に1回が目安です。フィルターの汚れは、能力の低下だけでなく、本体の寿命を縮めることにもつながります。
出典：これを知っておけば、冷房も暖房もお得に活用！―エアコン節電術7選―｜Panasonic
- フィルターを取り外す
- 掃除機でホコリを吸い取る
- 水洗いできるタイプは、中性洗剤で優しく洗う
- 完全に乾燥させてから取り付ける
室外機周りを整理する
室外機の周りに物が置いてあったり、雑草が生えたりしていると、空気の通りが悪くなり、エアコンの効率が落ちます。室外機周りを整理し、風通しを良くすることで、節電につながります。
- 室外機の前や周囲に物を置く
- 室外機の上に物を載せる
- 室外機をカバーで覆う（冷房使用時は特に注意）
- 雑草を放置する
夏場は、室外機に直射日光が当たると冷房効率が悪くなるため、すだれやよしずで日陰を作ることも効果的です。ただし、空気の流れを遮らないよう注意してください。
また、短時間の外出であれば、エアコンをつけっぱなしにした方が節電になる場合があります。ダイキン工業の実験では、日中30分程度の外出であれば、つけっぱなしの方が消費電力が少ないという結果が出ています。
出典：エアコン暖房を「つけっぱなし」にするのと「こまめに入り切り」するのでは、どちらの電気代が安くなるの？｜ダイキン
電力会社を見直して電気代をさらに削減
エアコンの電気代を節約したいなら、エアコンの使い方を工夫するだけでなく、電力会社の見直しもおすすめです。
電力自由化以降、家庭でも電力会社を自由に選べる時代になりました。大手電力会社に加え、「新電力」と呼ばれる事業者が多数参入しており、料金プランや特典内容も多種多様です。
- 夜間や休日に安くなるプラン
- ポイント還元や提携サービス割引
- ライフスタイルに合わせた柔軟なプラン
Looopでんきは解約金0円で電気料金は30分ごとに変化するため、電気料金が安い時間帯に家電を使うなど、ご家庭の中で電気を使う時間帯をずらすことで、節電を頑張らずに電気代を抑えることができます。
- ガスとのセット割を利用したい人
- 時間帯にあわせて細かく節約したい人
- 基本料金0円で使いたい人
| 電気料金単価 | 基本料金 | 料金タイプ |
|---|---|---|
|
約18円 ※30分ごとに変動 |
0円 | 市場連動型 ※JEPXスポット市場価格に連動 |
| ガスとのセット割 | 契約期間の縛り | 解約金・違約金 |
|
Looopガス ※東京都のみ |
なし | なし |
※2025年11月時点の情報
Looopでんきの詳細を見るエアコンの風量と電気代に関するよくある質問
Q
風量を自動にすると音がうるさくなりませんか？
A
自動運転では、設定温度に到達するまでは強風で運転するため、一時的に運転音が大きくなります。しかし、設定温度に達すると自動で微風や弱風に切り替わるため、運転音も静かになります。
就寝時などで運転音が気になる場合は、就寝の30分〜1時間前にエアコンを運転開始し、設定温度に到達してから就寝すると、静かな状態で眠れます。また、最近のエアコンには静音モードが搭載されている機種も多いため、活用するのも良いでしょう。
Q
除湿（ドライ）と冷房、どちらが電気代が安い？
A
除湿には「弱冷房除湿」と「再熱除湿」の2種類があります。弱冷房除湿は冷房よりも電気代が安くなりますが、再熱除湿は冷房よりも高くなります。
弱冷房除湿は、弱い冷房運転で室温を下げながら除湿する方式です。再熱除湿は、一度冷やした空気を再度暖めて室温を下げずに除湿する方式のため、電力消費が多くなります。ご家庭のエアコンがどちらのタイプか確認してから使い分けると良いでしょう。
Q
古いエアコンは電気代が高いって本当？
A
10年以上前のエアコンと最新の省エネモデルでは、消費電力に大きな差があります。最新モデルに買い替えることで、年間で数千円から数万円の節約になる場合もあります。
エアコンの省エネ性能は年々向上しており、インバーター制御や省エネ機能の充実により、効率的な運転が可能になっています。長年同じエアコンを使い続けている場合は、買い替えを検討する価値があるでしょう。
Q
エアコンを使わない季節はコンセントを抜いた方がいい？
A
エアコンを使わないシーズンには、コンセントからプラグを抜くことで待機電力を削減できます。待機電力による電気代は年間で約300円程度ですが、節約効果があります。
ただし、コンセントを抜く際は、必ずリモコンで運転を停止してから抜いてください。運転中にコンセントを抜くと、故障の原因になる可能性があります。
Q
部屋の広さとエアコンの能力が合っていないとどうなる？
A
部屋の広さに対してエアコンの能力が不足していると、常にフルパワーで運転することになり、電気代が高くなります。また、設定温度に到達しにくく、快適性も損なわれます。
エアコンを選ぶ際は、カタログに記載されている「適用畳数」を参考に、部屋の広さに合った能力の機種を選ぶことが大切です。木造住宅と鉄筋住宅でも適用畳数が異なるため、住宅の構造も考慮して選びましょう。
まとめ：エアコンの風量を自動にすることで節電が期待できる
エアコンの風量設定は電気代に影響しますが、「風量を弱にすれば節約できる」という考え方は誤りです。最も効率的なのは風量を「自動」に設定することで、約3割の節電効果が期待できます。
電気代を抑えるためのポイントは、以下の通りです。
- 風量は「自動」に設定する
- 冷房は28℃、暖房は20℃を目安に設定する
- 風向を適切に調整する（冷房は水平、暖房は下向き）
- サーキュレーターや扇風機を併用する
- フィルターを2週間に1回掃除する
- 室外機周りを整理して風通しを良くする
これらの方法を組み合わせることで、快適さを保ちながら効果的に電気代を節約できます。
また、日々の使い方の工夫に加えて、電力会社や料金プランの見直しも検討すると、さらに電気代を削減できる可能性があります。ライフスタイルに合ったプランを選ぶことで、年間の電気代が大きく変わることもあります。
正しい知識を持って効率的にエアコンを使い、光熱費を抑えながら快適な生活を送りましょう。
